漫画「ゴマ塩とぷりん」をネタバレ解説
東京の喧騒の中、ひときわ力強く生きる一人の若い女性がいた。
その名は晴日(はるひ)。22歳、重機オペレーターとして建設現場で働く“ガテン系女子”だ。
陽に焼けた肌、髪の根元が伸びたプリン状態の金髪、爪の隙間に残る土。誰よりも働き者で、男社会の中でもまっすぐ前を向いていた。
だが、彼女にはひとつ、悩みがあった――それは、地元で暮らす父親からの“結婚しろ”プレッシャー。
「そろそろ戻ってきて、普通の女の子らしい生き方をしろ」
そんな古風な価値観に、晴日は何度もため息をついていた。恋愛にも結婚にも興味はないわけじゃない。けれど、今の自分にとって一番のやりがいは“仕事”。その想いを理解してもらえないことが、なにより苦しかった。
そんなある夜、同僚たちと飲みに行った居酒屋で、晴日は酔いの勢いに任せて、つい口走ってしまう。
「誰でもいいから結婚しちゃえば、文句言われないのにね……」
その言葉にふと反応したのは、隣の席にいた年上の男性だった。
白髪が混じった柔らかい髪、落ち着いた瞳、上品な物腰――彼の名前は春原永人(すのはら・ながと)。
年齢は、晴日より20歳以上は上だろうか。会社員か、公務員か、そんな風にも見える。だが、その穏やかな佇まいには、どこか包容力のようなものが滲んでいた。
「それなら、僕と結婚してみる?」
冗談のような提案。でも、その時の晴日は、妙に心が疲れていたのだろう。
冗談で返せず、むしろその“逃げ道”に、ほんの少しの救いを感じてしまった。
――そして翌朝。
見知らぬ部屋、隣に寝ているのは、あの白髪交じりの“イケオジ”。
そしてテーブルの上には、しっかりと役所の印が押された婚姻届の控えが一枚。
夢だと思いたかった。でも現実だった。
晴日と永人は、昨夜の酔いに任せて、本当に結婚してしまっていたのだ。
最初は大慌て。慌てふためく晴日に対し、永人はどこまでも冷静で、「いったん、ゆっくり考えよう」と言って、仮の同居生活を提案する。
こうして、見た目は“親子”、性格もまるで正反対なふたりの、奇妙で不思議な“新婚生活”が始まった。
同居が始まれば、違いはすぐに露呈する。
晴日はガサツでズボラ、掃除も洗濯も後回し。でも仕事はまっすぐ。
永人は几帳面で、丁寧な所作が身についているが、どこか謎めいた静けさをまとっている。
最初は気まずく、ぎこちない日々だった。
けれど、同じ時間を過ごし、朝に「おはよう」、夜に「おつかれさま」を言い合うたび、少しずつ少しずつ、お互いの存在が“居心地のいいもの”へと変わっていった。
晴日は気づく。
永人の声は心地よくて、彼の入れるコーヒーは、なぜか優しい味がする。
永人もまた、晴日の笑顔や、泥だらけになりながら働く姿に、不意に胸を打たれていく。
でも、そんなふたりの前には、現実が立ちはだかる。
父親からの再三の呼び出し。
「そんな年上の男は許さん」「ふざけた結婚を続けるな」――
血のつながった親からの厳しい言葉に、晴日は揺れ、永人もまた、自分の年齢や過去に対する葛藤に苦しむ。
それでも――ふたりは選ぶ。
自分たちの意思で、この結婚を続けることを。
それは“失敗から始まった結婚”を、“本物の愛”に変える旅路でもあった。
やがて、永人は彼女にこう言うだろう。
「……晴日さん。君がよければ、今度こそ“ちゃんと”、僕と結婚してください」
ふたりの前には、これからもいろんな“現実”があるかもしれない。
でも、それを一緒に笑い合える相手がいるなら――それが、何よりの幸せだ。
📝あとがき風にひと言:
『ゴマ塩とぷりん』は、「偶然から始まった関係が、いつしか“かけがえのないもの”になる」そんな温かくもリアルな恋愛模様を描く、年の差じれキュンラブコメディです。
「出会い方が変でも、愛はちゃんと育つ」
そう信じたくなる、素敵な物語です。
0コメント