漫画「あなたのハジメテ、私にくれますか?」をネタバレ解説
ビル群の隙間をすり抜ける朝の風。東京のど真ん中にそびえるオフィスビルの1階で、篠村美由紀は今日も完璧な笑顔で来訪者を迎えていた。
制服姿の彼女は、社内でも“美人受付嬢”として有名だ。
明るく、親しみやすく、けれどどこか艶っぽい。
そんな彼女が密かに付き合っているのが、あの副社長秘書――千葉斗真だった。
千葉は、社内の誰もが一目置く存在。
整った顔立ちに、冷静沈着な性格、スマートな物腰と圧倒的な仕事ぶり。
彼の隣に立てる自分を誇らしく思っていたし、誰より彼を愛していると信じていた。
…だけど。
――どうして、彼は手を出してこないの?
交際を始めてしばらく経つというのに、キス以上の関係になったことがない。
彼の指が、胸元に伸びてくることもなければ、耳元で甘い言葉を囁かれることもない。
「まさか…私って女として魅力ない?」
夜も眠れないほど悩んだ末、美由紀はついに決断する。
“夜這い”作戦である。
可愛いランジェリーを選び、勝負の香水をまとう。
彼の部屋に「ちょっと寄ってもいい?」と可愛く誘い、眠りにつく彼の隣でそっと布団に入り込む。
「ねぇ…私たち、もっと深い仲になってもいいんじゃない?」
そっと手を伸ばした美由紀の指先が、彼の肌に触れたその瞬間――
思いがけない言葉が、斗真の口からこぼれ落ちる。
「……ごめん、俺、そういうの……初めてなんだ」
えっ――?
あの完璧イケメンが!?
思わず美由紀は息を呑んだ。
童貞。
この令和の東京に、しかもこんな整った見た目で、社内人気ナンバーワンの男が、未経験――?
「でも、それって……むしろ、萌えるんですけど!!」
美由紀はすぐに切り替える。
誰も知らない、斗真のピュアな一面に触れられるのは、自分だけ。
そんな“特別感”に胸を高鳴らせ、彼の手を引いて導こうとした……そのはずだったのに。
気づけば、彼が上にいた。
「…美由紀のこと、ちゃんと知りたいから」
目の前には、赤面していたはずの彼とは思えない、熱を帯びた瞳。
優しい手つき、丁寧な愛撫、そして心を重ねるような口づけ。
「ちょっと待って? 童貞の手つきじゃないよこれ!?」
戸惑いと快感の波に飲まれながら、美由紀は初めて知る。
斗真がどれほど自分を想い、どれほど我慢していたかを――
そしてその夜、ふたりはようやく本当の意味で、恋人になった。
この“ハジメテ”をきっかけに、ふたりの関係はどこまでも深く、甘く、そして熱くなっていく――。
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