漫画「鏡巳くんのクソデカ執愛。私が嫌いなオフィスの王子はXLで変態」をネタバレ解説
小鳥は、お客様相談センターに勤めるOL。
人当たりは良いが、決して器用とはいえない性格で、クレーム対応にもつい感情がにじみ出てしまう。そんな自分と、同期の鏡巳を比べるたび、胸の奥がざらついた。
鏡巳は、どんな厳しい相手にも微笑みを崩さず、的確に解決へと導く“謝罪王子”と呼ばれる男だ。整った容姿、洗練された立ち振る舞い、落ち着いた声色――完璧な彼は、いつだって周囲の注目をさらっていく。
小鳥にとっては憧れと劣等感の象徴であり、同時に、近づきがたい壁のような存在だった。
そんな小鳥には、誰にも言えない秘密がある。
「狭くて、指一本も入らない」――そんな体のせいで、恋愛はいつも中途半端に終わる。快感どころか痛みしか感じられず、満足できた試しがない。だからこそ、恋にも積極的になれず、ストレスは一人きりで密やかに解消するしかなかった。
ある晩、部署の飲み会で泥酔した小鳥は、気づけば見慣れぬ天井を見上げていた。重たいまぶたを上げると、そこには鏡巳の顔がある。
しかし、その眼差しはいつもの爽やかな王子様のものではなかった。
熱を帯び、暗く光る瞳。静かなはずの声は低く震え、小鳥の心臓を一瞬で締め付けた。
「ずっと、お前が欲しかった」
耳元に落とされたその言葉と同時に、小鳥の視界はある一点に釘付けになる。
服の間からのぞく、それは規格外の存在感。息が詰まり、言葉も出ない。
いつも穏やかで距離を取っていた彼が、今は獲物を前にした捕食者のように近づいてくる。
戸惑いと恐怖、そして…なぜか胸の奥に灯る微かな期待。
混ざり合う感情を整理する間もなく、鏡巳の指先が頬をなぞり、唇を掠める。
「俺なら…お前をちゃんと気持ちよくできる」
その囁きは、挑発とも慰めともつかない。
小鳥は抗おうとするが、鏡巳の眼差しと体温が、否応なく心を揺らしていく。
翌日から、鏡巳は何事もなかったように職場で振る舞う。
だが二人きりになると、あの夜の続きを暗に示すような視線や仕草を繰り返す。
その執着は次第に形を変え、優しい笑顔の裏に潜む独占欲を隠そうともしなくなる。
さらに、小鳥が憧れる商品開発部の先輩が彼女に近づき始めると、鏡巳は嫉妬心をむき出しにする。
会議室の片隅で、笑顔を貼り付けたまま低い声で囁く。
「俺以外のやつに触れられるな。…わかったな?」
小鳥は、自分を縛るような愛情に戸惑いながらも、なぜかその言葉に心が揺れる。
これは恐怖なのか、それとも…ずっと欲しかった“自分だけを見てくれる存在”なのか。
やがて、二人の関係は隠すことが難しいほどに深まっていく。
甘く危険な執愛に身を委ねるべきか、自由を守るために距離を置くべきか――
小鳥の答えは、まだ、胸の奥で揺れていた。
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