漫画「財前家令嬢の誘惑には抗えない」をネタバレ解説
堀内順平――28歳、独身。
都内の小さな自動車整備工場で働く彼は、毎日油と汗にまみれた仕事をこなしていた。だがその心の奥には、密かな夢があった。「高級外車を運転するドライバーになる」――それは少年の頃から抱き続けた、叶いそうで叶わなかった願いだった。
ある日、彼のもとに舞い込んだ一件の求人。それは、日本屈指の大財閥・財前グループの理事、財前重臣の専属ドライバーという破格の職だった。準備に準備を重ね、緊張の面接をなんとか乗り越えた順平は、見事その職を射止めた。
新しい制服に身を包み、最新の外車に乗り込んだ順平は、自分の人生が変わったことを確かに感じていた。だが、その輝きは束の間のものだった。
財前理事は、厳格で冷酷、まさに“企業戦士”の権化のような男だった。順平の運転が少しでも気に入らなければ無言で降車、秘書や部下には平然と暴言を吐く。順平は、「高級車を運転する夢」を叶えながらも、毎日が胃の痛むような緊張の連続だった。
そんなある日、突如、ニュースが飛び込んでくる。
財前理事が乗っていたクルーザーが転覆事故に遭い、遺体で発見されたというのだ。
混乱する社内、動揺する関係者たち。
だが、その中で最も大きな変化に直面したのは、他ならぬ順平だった。
理事の急死を受け、アメリカに留学していた一人娘・財前菫子(すみれこ)が急遽帰国。順平は空港へ彼女を迎えに行くよう命じられる。
到着ゲートに姿を現した彼女は、まさに圧巻だった。
長い黒髪、鋭い目元、すらりと伸びた手足。彼女はまるで、現代の王女のようなオーラをまとっていた。傲慢で自信に満ち、どこか近寄りがたい……が、その奥には、父を失った少女の繊細な影が宿っているようでもあった。
「ねえ、あなたがパパのドライバーだった人? 今夜、ホテルまで案内して。……もちろん、スイートルームよ」
何気ない一言が、順平の人生をさらに狂わせていく。
その夜、ふたりは同じ部屋で過ごした。
何も起こらなかった――と言えば嘘になるが、何かが決定的に変わったというわけでもない。ただ、順平の中に「彼女を守らなければならない」という感情が芽生え始めていたのは確かだった。
翌朝、順平は菫子から直々に「専属ドライバーとして財前家に住み込みで働くように」と命じられる。
こうして彼は、財前家の屋敷へ足を踏み入れる。
そこには、想像以上に濃密で、そして危うい世界が広がっていた。
菫子の母である財前夫人は、歳を重ねてもなお艶やかで品のある女性。
家事を取り仕切るメイドは明るく親しげで、時折大胆すぎるボディタッチをしてくる。
さらに、かつて理事を支えていた冷静沈着な美人秘書まで、何かと順平に目を向けてくる。
屋敷の中は、ほぼ“女の園”。
そのすべてが順平を異物として扱うのではなく、どこか興味深く受け入れようとしている。
そして何より、菫子。
父を失い、未熟ながらも財前家を継ごうと奮闘する彼女は、強さと脆さを併せ持ち、時に順平へ甘え、時に突き放す。
順平は、次第に財前家の中で不可欠な存在になっていく。
ドライバーという役割を超えて、使用人、相談相手、そして……女たちの“欲望”の標的として。
気づけば彼は、抗うことなどできないほどの“甘く、淫らな関係”の中心にいた。
――だが、これは単なる快楽の物語ではない。
やがて訪れる、菫子との「主従を超えた関係」
財前家を守るか、それとも離れるかという“選択”
そして、順平自身が選び取る“愛”と“人生”とは。
これは、使用人と令嬢、そして女たちとの間で揺れ動く一人の男の、甘美で危険な物語。
その先に待つ結末を、彼自身もまだ知らない――。
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