漫画「今日から友達シよ!」をネタバレ解説
夜の街が雨に濡れていた。傘も差さずに歩く千田翔吾の心には、どしゃぶりのような失恋の痛みが染み込んでいた。
「好きな人ができたの、ごめんね」
3年付き合った恋人・美結からのその一言は、あまりに唐突で、あまりに冷たかった。
──終わったんだ。俺の恋は、今日で。
心の穴を埋めるように、翔吾は一本の電話をかける。相手は、昔からの友人であり、飲み友達の高宮杏奈。サバサバしていて気楽に接せられる、数少ない“異性の親友”だ。何も言わずに、ただ「飲もうぜ」と言ってくれる彼女の存在は、今の翔吾にとって救いだった。
居酒屋で再会したふたり。最初は他愛ない会話に笑い合っていたが、酒が進むうちに、翔吾の心の傷が次第に滲み出てくる。酔いに任せたような口調で、彼はふと口にする。
「結局、女なんて、みんな同じなんだよ…」
その瞬間、杏奈の笑顔がピタリと止まった。
「はあ? 何言ってんの、あんた」
「だってさ…誰だって、結局もっといい男がいれば乗り換えるだろ」
「……ならさ、賭けてみる?」
そう言って杏奈は、翔吾の顔を真っ直ぐ見つめた。酔いも手伝ってか、その瞳には冗談とも本気ともつかない光が宿っていた。
「私が舐めて、翔吾が勃ったら、“みんな同じ”ってことでいいよね?」
一瞬、時が止まったように感じた。
冗談で済ませるには、距離が近すぎる。空気が熱を帯びて、視線の交差が思考を奪う。
──まさか、この杏奈と、俺が……?
そして、ふたりは一線を越えてしまう。
翌朝、静かな部屋で目を覚ました翔吾は、隣で寝息を立てる杏奈を見つめながら、自分の行動を悔やみかける。
「これ、まずかったよな…」
だが、杏奈はいつものように何食わぬ顔で「酔ってたし、まぁ別に」と笑う。
──だが、何かが確実に変わっていた。
それは友情の終わりではなく、
始まってしまった、恋の予感だった。
この日を境に、翔吾は「女としての杏奈」を意識しはじめる。けれどそれは、“たまたまそうなった”ことの延長でいいのか、自分の気持ちなのか、分からないままに時間は過ぎていく。
そして杏奈もまた、明るく振る舞いながらも、心に芽生えた“恋”の芽を持て余していた。
「友達でいられなくなるの、怖いんだよ…」
友情と恋愛の境界線。
踏み込めば壊れてしまうかもしれない。けれど、今までの関係にはもう戻れない。
そんな二人の、もどかしくて甘酸っぱい、でもどこかリアルな恋の駆け引きが、いま始まろうとしていた。
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