漫画「頼くんとヨリを戻すわけには! (プチデザ)」をネタバレ解説
春の風がふわりと頬をなでる、そんな晴れやかな日。
段ボールを両手に抱えながら、初帆は東京の小さなアパートの階段を上っていた。
「よし、ここからが私の“新生活”のはじまり!」
夢だった大学に合格し、いよいよ待ちに待った一人暮らし。
自由でキラキラしたキャンパスライフに胸を膨らませながら、彼女は“過去”も“田舎”も置いて、思い切り未来へと飛び出してきたはずだった。
しかし、運命はそう簡単には逃がしてくれなかった。
引っ越し当日、隣の部屋のドアがふと開き、聞き覚えのある低い声が聞こえた。
「お前…初帆?」
荷物の影から顔を出したその人物――
長身、ちょっと寝ぐせ気味の黒髪、けだるげな表情。
一瞬、心臓が跳ねた。
「……頼くん?」
そう、中学時代に付き合っていた、そしてあの頃、不器用すぎて気まずく別れてしまった相手――頼(らい)だった。
この東京の街で、しかも“隣の部屋”で再会するなんて、そんな偶然ある?
でも、目の前の彼はまぎれもなく、あの“元カレ”だった。
「あのときのことは、もう忘れた」
「こっちは新しい生活が始まるんだから、関わるつもりなんてない」
そう自分に言い聞かせて、初帆は頼との再会をなかったことにしようとする。
けれど、頼はあっさりとその壁を壊してくる。
「まだ好きなんだよ。俺、お前のこと」
まるで昨日別れたばかりのように、頼はストレートな言葉をぶつけてきた。
彼の言葉は不意打ちのように、初帆の胸の奥に残っていた傷を刺激する。
──あの時、もっとちゃんと話せていれば。
──自分の気持ちに素直になれていれば。
もう終わったことのはずだったのに、頼と再び会話を交わすたび、あの頃のときめきや後悔が少しずつよみがえってくる。
けれど、過去をやり直すなんて、そんな簡単にできることじゃない。
「昔とは違う。今さら何を言われたって…」
そう思って踏みとどまろうとする初帆に、頼は迷いなく言う。
「だったら、今の俺を見て決めてよ。もう二度と、お前を泣かせたりしない」
彼は変わったのか、それとも変わっていないのか。
この再会は偶然か、それとも運命か。
不器用で、すれ違いばかりだった初恋。
でもきっと、それだけじゃ終わらない。
東京の片隅、小さなアパートの隣同士。
閉じたままだったふたりの物語が、いま、再び動き始める――。
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