漫画「ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される」をネタバレ解説
赤毛のせいで「不吉」と蔑まれ、両親からも愛されることなく、姉の陰に隠れて育った少女――マリー・アンダーソン。
彼女は男爵家の次女でありながら、屋敷では召使のようにこき使われ、粗末な服を着せられ、顔を上げることすら許されない。
けれどマリーは、そんな日々に疑問すら抱かない。「家のために尽くすのが自分の務め」――そう思い込むことで、心を守っていた。
そんなある日、姉・アナスタジアが大国の名門グラナド伯爵家との縁談を持ち込まれる。相手は若き当主、キュロス・グラナド。
容姿端麗、文武両道、政財界からの信頼も厚い理想の男性で、彼との婚約はアンダーソン家にとってまさに一発逆転の大チャンスだった。
だがその出会いの場で、ほんの偶然、マリーとキュロスは言葉を交わす。
マリーの素直さ、慎ましさ、どこか痛ましいまでに優しい瞳――
それらすべてに、キュロスは「何か」を感じ取っていた。
しかし彼は、誤解からアナスタジアをマリーと勘違いし、彼女にプロポーズしてしまう。
婚約はあっという間に成立し、マリーは再び“背景”へと退くことになる。
だが運命は、あまりに皮肉だった。
姉・アナスタジアが、婚約後まもなく不可解な事故でこの世を去ってしまったのだ。
悲しみに暮れる間もなく、家には王宮から通達が届く――
「伯爵家との婚約を、妹が引き継ぐこと」
それは貴族間の体裁を守るための、ただの形式的な処理。
両親はマリーに命じた。「姉の代わりに嫁げ。それが家のためだ」と。
マリーは戸惑いながらも、それを拒むすべを知らなかった。
こうして彼女は、愛されるはずのなかった婚約者として、グラナド伯爵家の門をくぐることになる。
キュロスは、驚くほど変わらず優しかった。
形式だけの婚約などと扱わず、まるで“本物の花嫁”のように接してくる彼に、マリーは困惑する。
だって彼は、姉を愛していたはず――それなのに、なぜ自分をまっすぐに見てくるの?
やがて、キュロスの言葉がマリーの心を揺さぶる。
「僕が愛しているのは、君だ。あの日、庭で出会ったときからずっと。」
信じられなかった。けれど、少しずつ、マリーの胸に芽生えていくものがあった。
初めて誰かに“人として”扱われ、心を向けられ、そして愛される――その温もりが、冷え切っていたマリーの心を少しずつ溶かしていく。
だが、幸せの影には、隠された真実があった。
姉の死の真相、アンダーソン家の秘密、マリーの出生――
過去と向き合わねば、本当の未来は掴めない。
何もかもに怯えていた少女が、
誰かに選ばれることを恐れていた令嬢が、
「自分自身の意志」で愛を選び、人生を歩もうとする――
これは、“ずたぼろ”だった少女が、自分の心と愛を取り戻していく物語。
0コメント