漫画「私たちは離婚する。深く、甘く、繋がって」をネタバレ解説
「私たちは離婚する。深く、甘く、繋がって…」
カフェの窓際席。杉本光波は、カップの縁を指でなぞりながら、いつも決まった席に座る男を見つめていた。
桐乃悠斗——端正な顔立ちにクールな雰囲気を纏い、カフェの常連客として何度も顔を合わせている。その存在は気になっていたが、こうして言葉を交わすことになるとは思ってもいなかった。
「酔ってる?」
「……ちょっとだけ」
会社の飲み会帰り、偶然出くわした悠斗に誘われ、二人で飲みに行くことになった。アルコールのせいか、それとも彼のどこか余裕のある態度のせいか、普段なら言えないようなことが口をついて出る。
「私……不感症なんだ」
打ち明けた瞬間、沈黙が落ちた。やってしまった。なぜこんなことを話してしまったのだろう。羞恥と後悔が一気に押し寄せる。
しかし、悠斗は意外な言葉を返した。
「それ、開発されてないだけかもよ」
いたずらっぽく笑う悠斗に手を引かれ、気づけば彼の部屋のベッドの上にいた。
触れる指先は優しく、それでいて情熱的で、まるで自分の中の何かを呼び覚まそうとしているようだった。肌を這う舌、熱を帯びた吐息、初めて知る快感に、光波の体は甘く痺れていく。
そして、囁かれた言葉。
「結婚してくれない?」
冗談のようで、どこか本気にも聞こえるその提案に、光波は息を呑んだ。
それは“契約結婚”だった。悠斗の事情はよくわからなかったが、お互いに割り切った関係のまま結婚生活を送ることに。
けれど、彼はあまりにも優しかった。ベッドの中だけでなく、日常の些細な瞬間にも気遣いを見せる。風邪をひけば看病してくれるし、落ち込んでいるとそっと励ましてくれる。何気ない日々のやり取りの中で、光波は次第に彼に惹かれていく自分を自覚するようになる。
でも、この結婚には期限がある——。
「好きになっちゃいけない」そう思うほど、胸が苦しくなる。もし契約が終わったとき、自分は悠斗なしで生きていけるのだろうか?
そして迎えた契約の期限。悠斗は最後まで普段通りの態度を崩さなかった。離婚届を前に、光波は震える手でペンを取る。
「……これで終わり、だよね」
小さな声で呟くと、悠斗はじっと彼女を見つめ——次の瞬間、ペンを取り上げた。
「違う」
「え……?」
「終わらせる気なんて、最初からなかった」
彼の手がそっと光波の頬を包む。その瞳には、これまで見たことのないほどの真剣な想いが宿っていた。
「お前とずっと一緒にいたい」
契約ではなく、ただ純粋に彼の心からの言葉。それを聞いた瞬間、堪えていた涙が溢れた。
こうして、期限付きの関係は本当の愛へと変わる。深く、甘く、そして永遠に——。
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