漫画「君を映して離さない」のあらすじ
中学時代からの親友、猿方香月は、誰もが振り返るほどの美貌を持っていた。犬丸りおは、そんな香月の隣でいつも影のような存在だった。香月と一緒にいれば、周囲の視線は彼女ばかり。りおは、まるで自分が透明人間になったような気がしていた。
そんなある日、りおは同じクラスの春田に小さな優しさを見つけた。髪型の変化に気づいて声をかけてくれる春田に、りおの心は揺れ動く。しかし、その淡い想いは脆くも崩れ去った。春田の視線が向いていたのは、やはり香月だったのだ。
失恋の痛みに耐えきれず、りおは授業を抜け出して屋上へと足を運んだ。冷たい風が頬を撫で、心の痛みを少しだけ和らげた気がした。そんな時、静かに現れたのは越前谷だった。マスクで顔を隠し、「死神」と呼ばれる彼が、りおの隣にそっと腰を下ろす。
「俺さ、ずっと見てたんだ。」
その静かな声に、りおの心は不意に揺れた。思わず頬が赤くなる。けれど、その言葉がりおの重い心を少し軽くしていた。
数日後、りおは香月と共にクラスの集まりに参加する。しかし、男子生徒たちが「りおは香月の脇役」だと笑っている場面に遭遇してしまう。笑ってごまかそうとするも、喉がつかえて言葉が出ない。
「そういうの、つまんないよ。」
場の空気を切り裂くような落ち着いた声が響いた。振り返ると、端正な顔立ちの男子がりおを静かに見つめていた。彼の一言で、男子たちはバツが悪そうにその場を離れていく。
「……大丈夫?」
その優しい声に、りおは小さく頷いた。胸の奥に温かさが広がり、りおは少しだけ自分に自信が持てた気がした。
これは、脇役だった少女が自分自身の物語を歩み始める、そんな始まりだった。
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