漫画「できても、できなくても」をネタバレ解説
――静かな夜。都会の片隅にある小さなアパートの一室で、湊(みなと)は深く息を吐いた。
彼は誰よりも真面目で、仕事も恋も「ちゃんとできる人間」でありたいと願って生きてきた。
だが、恋人の悠人(はると)と出会ってから、その「理想」は少しずつ揺らぎはじめる。
湊と悠人は、同じ職場で出会った。最初は仕事仲間として距離を保っていた二人だったが、悠人の素直な笑顔と、時折見せる寂しげな横顔に惹かれていく。
真っ直ぐで、少し不器用な悠人。そんな彼に惹かれる一方で、湊は自分の中にある“できない”部分――恋愛における不安や、性の悩みを抱えていた。
「好きなのに、どうしてもうまくできないんだろう」
その葛藤は、夜を重ねるたびに大きくなっていく。湊は、自分の体と心のズレに戸惑い、悠人に申し訳なさを感じてしまう。
しかし、悠人はそんな湊を責めることなく、ただ優しく抱きしめた。
「湊ができても、できなくても、俺は湊がいいんだよ」
その一言が、湊の心を大きく変えていく。
“できる”か“できない”かではなく、“好き”という気持ちをどう大切にしていくか――。
二人の関係は、肉体の結びつき以上に、心のつながりを深めていく方向へ進んでいく。
やがて、仕事の異動やすれ違いが二人を試すように訪れる。
湊はまた、「自分なんて」と殻に閉じこもろうとするが、悠人は何度でもその手を引いた。
「湊の全部を知って、それでも隣にいたい」
――その言葉に嘘はなかった。
ラストでは、湊がようやく自分を許し、悠人と共に歩む決意をする。
ベランダで見上げた夜空の星の下、二人はそっと手を繋ぐ。
完璧じゃなくても、理想通りじゃなくても――それでも、幸せはここにある。
「できても、できなくても」。
このタイトルが象徴するのは、“恋愛の形はひとつじゃない”という優しい真実だ。
誰かを愛することの不器用さと、そこに宿る温もりを、静かに、丁寧に描いた物語となっている。
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