漫画「唇に毒薬~死なずの王子は彼女の愛で眠りにつきたい~」をネタバレ解説
夜風が冷たく吹き抜ける古城の一室。
そこには、長い間“死なずの王子”と呼ばれ、永遠の時を彷徨い続ける青年――レオンがいた。
その美しい容姿はまるで彫刻のように整っているが、彼の心はとっくに壊れていた。
幾千の時を生き、裏切りと血と孤独の中で、彼は“死”という安らぎさえも許されなかったのだ。
一方、そんな伝説の王子にまつわる噂を追ってやって来たのが、植物学者のリナ。
彼女は、辺境の村に伝わる“毒をもって人を癒す花”を研究していた。
そしてある夜、森の奥深くで、傷ついた男――レオンを拾う。
彼の血は黒く、体温は異常に低い。それでも瞳だけは燃えるように赤く、彼女を見つめていた。
「俺を助けるな。お前まで呪われる」
そう言い放つ彼に、リナは微笑む。
「呪いでも構いません。あなたの苦しみを終わらせることができるなら」
やがて、二人は奇妙な共存生活を始める。
リナは彼の身体を癒す薬を作りながら、彼の心の闇にも触れていく。
レオンが不死となったのは、かつて愛した女性を自らの手で殺してしまったため――。
その罪を償うために、彼は永遠の命という罰を受けていたのだ。
しかし、リナの存在が彼の心に再び“温もり”を灯していく。
触れ合えば触れ合うほど、彼は「また人を愛してしまう」恐怖と、「彼女を失いたくない」という願いの狭間で苦しむ。
そしてついに、彼の口から愛の言葉がこぼれた瞬間――彼の身体は崩れ始める。
「愛してはいけない。だが……お前だけは……」
レオンの頬を伝う涙と共に、リナは気づく。
“死なずの呪い”を解く鍵は、愛そのものだったのだと。
真実の愛が、彼の魂を“安らぎ”へ導く――。
ラストでは、リナが自らの命を賭してレオンに“最後の口づけ”を捧げる。
それは毒と愛が混じり合う、命の終わりのキス。
そして、彼の頬に微笑みが浮かぶと同時に、彼の体は光となって消えていく。
残されたリナは涙を流しながらも、彼の温もりを胸に抱く。
「おやすみなさい、レオン。どうかもう二度と、苦しまないで」
夜明けの空に、光が差し込む。
永遠の夜に閉ざされていた“死なずの王子”は、ようやく“眠り”についたのだった。
――これは、“毒”のように甘く切ない、愛と赦しの物語。
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