漫画「その男、沼につき。」をネタバレ解説
25歳の木下桃花は、恋に臆病な女性だった。
少女漫画のようなキラキラした恋に憧れながらも、実際は空回りばかり。ようやくできた彼氏には「重い」と言われて振られ、心にぽっかりと穴が空いてしまった。
そんな夜、桃花はやけ酒に逃げ、記憶が途切れるまで飲み続けた。
そして翌朝――。
彼女が目を覚ましたのは、見知らぬ部屋のベッド。隣には、年下の大学生・叶が涼しい顔で横たわっていた。
「おはようございます、木下さん」
軽やかにそう声をかける彼に、桃花は顔を真っ赤にして飛び起きる。何が起きたのか分からず混乱する桃花をよそに、叶はどこか余裕のある微笑を浮かべていた。
叶は「来る者拒まず、去る者追わず」と公言する“沼系男子”。
掴みどころがなく、気まぐれで、けれど一瞬の優しさや無防備な笑顔で人の心を簡単にさらってしまう。桃花は彼の態度に振り回されながらも、妙に目を離せなかった。
やがて、成り行きから二人は同居することに。
「恋愛経験が少ないから、少しでも勉強したい」
そう口にした桃花に、叶は「じゃあ僕が練習相手になりましょうか」と軽く笑う。
仮交際という奇妙な関係が始まり、二人は同じ屋根の下で日々を重ねていく。
最初はただの練習のはずだった。
だが、洗濯物を取り込む何気ない仕草、夜に見せる穏やかな横顔、不意に触れる指先――。
その一つひとつが桃花の胸を震わせる。
「これは、練習なんかじゃない…私は、叶くんに惹かれてる」
そう自覚したときには、もう彼女は“沼”に深く沈みかけていた。
しかし、叶の本心は見えない。
彼の微笑みは本物なのか、それともただの気まぐれなのか。
桃花は揺れる心を抱えながら、それでも一歩ずつ彼の隣へと近づいていく。
――恋愛初心者の大人女子と、掴みどころのない年下男子。
一つ屋根の下で始まった仮の関係は、いつしか“本当の恋”へと姿を変えようとしていた。
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