漫画「推定悪役令嬢は国一番のブサイクに嫁がされるようです」をネタバレ解説
気がつくと、そこは日本ではなかった。
剣と魔法が存在する、まるで物語の世界のような異国の地。美しいドレス、輝く宝石、そして貴族社会が広がる世界で、エマニュエル・ベイツリーは目を覚ました。
彼女は転生していた。しかも、乙女ゲームに登場する"悪役令嬢"として──。
エマの前世の記憶ははっきりしている。この世界は彼女がかつてプレイした乙女ゲームそのもので、自身の役割はヒロインをいじめる冷酷な悪役。ゲーム内でのエマは、王太子に執着し、あらゆる策略を巡らせ、最後には断罪される哀れな役回りだった。
転生直後こそ戸惑ったエマだったが、持ち前の明るさとポジティブさで「まあいいや、せっかくなら推し探そう」と、この世界を楽しむことにした。自分の美貌や魔力、貴族としての立場をある意味ゲーム感覚で活かしつつも、ゲームの筋書きから外れるように細心の注意を払っていた。
しかし運命は無情だった。
ストーリーの大筋は変わらず、王太子ユリウスとの関係は破綻し、エマは"悪役令嬢"として王城の法廷に立たされてしまう。
そして下された判決は──
「辺境伯、ルース・サントリナと婚約し、すぐに嫁げ」
その名を聞いた瞬間、廷内にはざわめきが走った。
“国一番のブサイク”と陰でささやかれる男。
金髪に紫の瞳、肌の色も淡く、まるで絵本の妖精のような異質な容姿。
この国では、色素の薄い者は「不吉」「醜い」とされ、遠ざけられていた。
だが、エマは違った。
──えっ、めっちゃタイプなんだけど!??
思わず二度見するエマ。前世の感覚をそのまま持ち合わせた彼女にとって、ルースは信じられないほどのイケメンだった。清廉で落ち着いた物腰、知性を感じさせる声。しかも性格は穏やかで、礼儀正しく、誠実で──スペックも完璧。
なぜこれが「ブサイク」扱いなのか、彼女には理解できなかった。
周囲は「断罪された令嬢が、見た目も性格も最悪な男に嫁ぐ」という最悪の流刑劇だと思っていた。
だが、当のエマ本人だけが大喜びしていたのだ。
「私がこんな素敵な人のお嫁さんに!? これはご褒美では!?」
一方、ルース本人は戸惑っていた。
彼にとって自分の容姿は忌まわしい呪いであり、誰かに見つめられることすら恐れてきた。
エマの無邪気な好意が、最初は信じられず、何かの策略かと疑っていた。
それでも、エマの想いは一貫している。
「あなたは素敵です」
「私はあなたのすべてが好きです」
まるで太陽のような笑顔で言い切るエマに、ルースの心は徐々に解けていく。
だが、2人の関係は、単なる恋愛だけでは済まされない。
貴族社会の偏見、容姿への差別、政治的な圧力──あらゆる壁が2人の前に立ちはだかる。
それでもエマは諦めない。
たとえ世界が「醜い」と言おうとも、彼女の目に映るルースは、世界一美しい人だから。
そしてルースもまた、エマのまっすぐな想いに勇気をもらい、かつて抱えていた自分への嫌悪を手放していく。
──これは、悪役令嬢として断罪された少女と、"ブサイク"と呼ばれた紳士が、
互いの美しさを信じ、愛し合い、世界の価値観をひっくり返すラブストーリー。
罰として始まった婚約は、やがて“運命の愛”へと変わっていく。
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