漫画「私、嫌われ皇妃で構いません!」をネタバレ解説
千年前、滅びゆく世界の中で、ひとりの皇帝と聖女がいた。
人々から「破滅の皇帝」と恐れられたその男は、実は――世界を救うために、自らがすべての闇を背負った英雄だった。
そして、彼を信じ、愛し、命を捧げた聖女もまた、その真実を語ることなく、民の手によって命を落とした。
二人は、何も伝え合えないまま、運命に翻弄され、永遠の別れを迎えたのだった。
――そして現代。
隣国グランベルグ王国の王女、シェイラは、ある日突然、過去の記憶を夢のように思い出す。
そこで彼女が見たのは、命を賭して守ろうとしたあの人――
世界を滅ぼしたとされる皇帝の、誰よりも優しい横顔だった。
「このままでは、また彼が――あの人が、自らを犠牲にしてしまう……!」
過去を知る彼女だけが、未来を変える鍵を握っている。
ならば自分がやらなくてはならない。たとえどんな手を使ってでも、彼を止めるのだ。
その想いを胸に、シェイラは政略結婚という形で、大国ヴァルディア帝国の皇帝・クライヴのもとへ嫁ぐことを決意する。
それは、自ら“嫌われ皇妃”となる覚悟をもっての決断だった。
だが、彼――クライヴもまた、前世の記憶を持っていた。
彼女を救えなかった悔しさ、誰よりも大切だったのに自らの手で遠ざけてしまった後悔。
今世こそ、彼女を守りたい。だが、それは近づくことではない。
むしろ――突き放すことが、彼女を守る唯一の方法だと信じていた。
「あなたを皇妃として迎えたのは、国のため。それ以上でも以下でもない」
冷たい言葉、冷たい視線。
愛しているからこそ、愛していると言えない。
そんなクライヴの不器用な想いに気づいたシェイラは、それでもなお彼に向かって手を差し伸べる。
「嫌われたって構わない。私は、あなたを救いたいの」
その言葉には、千年前に果たせなかった“愛の意志”がこもっていた。
たとえ拒まれても、嫌われても、彼の運命を変えるために、シェイラは一歩一歩近づいていく。
優しく、でも決して揺らがない意志で。
一方で、宮廷ではさまざまな陰謀と権力闘争が渦巻いていた。
皇妃としてふさわしくないと冷たい視線を向ける貴族たち、彼女を排除しようとする勢力、そして、再び動き出す“世界の破滅”の兆し――。
運命はふたたび、ふたりを引き裂こうとする。
けれど、今回は違う。
今回は、もうひとりじゃない。
もう「言わなければ伝わらない」という後悔を、ふたりは繰り返さない。
それが、千年の時を超えて巡り合った“愛の本当のかたち”だった。
✨終わりに
「前世で報われなかったふたりの恋が、今世こそ結ばれるように――」
そんな切実な願いを抱かずにはいられない、静かで、でも力強い愛の物語です。
彼らの一歩一歩が、どこかで読者自身の“もう一度やり直したい過去”に重なるような、そんな余韻の残る作品です。
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