漫画「タイガの森の狩り暮らし 契約夫婦の東欧ごはん」をネタバレ解説
冷たい風が吹き荒れ、雪が深く積もる針葉樹林(タイガ)。そこに、ひとりの男が足を取られながらも懸命に走っていた。
ミハイル・ニコラエヴィチ。元は貴族の家に生まれながらも、ある事情から追われる身となり、町を捨てて逃げてきた男だった。荒れ狂う吹雪の中、彼はついに力尽き、その場に倒れ込んでしまう。このまま意識が遠のき、命も尽きるのだろうか。
――そんな彼の前に、一人の女が現れた。
弓を背負い、獲物を担ぎ、凛とした瞳で彼を見下ろす女性。彼女の名は オリガ。この森で狩りを生業としながら生きる、凄腕の狩人だった。
「……お前、ここで死ぬ気か?」
冷たくも落ち着いた声が響く。だが、次の瞬間、彼女の口から思いがけない言葉が飛び出した。
「お前には、私の夫になってもらう」
ミハイルは一瞬、耳を疑った。自分は今、命を救われたばかりだ。なのに、いきなり夫だと?
しかし、彼には町に戻ることができない。ならば、ここで生きるしかない。そう結論を出した彼は、オリガの提案を受け入れ、 契約結婚 を結ぶことになった。
オリガが暮らすのは、森の奥にある狩人たちの村。そこでは、男も女も関係なく、狩りをし、獲物を捌き、生きるために力を尽くしていた。
だが、ミハイルは狩りができない。矢を射ることも、獲物を仕留めることもままならない彼は、自分に何ができるのかを考えた。そして、彼には 料理の腕 があった。
元はパン職人として町で生きていたミハイル。彼は、村にある ストーブと一体化したかまど を使い、小麦をこね、パンを焼き始める。森で獲れる鹿や兎の肉をじっくり煮込み、香ばしいスープを作る。燻製を仕込み、村の人々にふるまいながら、少しずつこの地に馴染んでいく。
「へえ、お前、料理ができるのか」
初めは無関心だったオリガも、彼が作る料理に興味を示し、次第に二人は言葉を交わすようになっていく。
だが、平穏な日々は長くは続かない。
ある日、森に不穏な影が現れる。ミハイルを追ってきた者たちが、ついに彼の居場所を突き止めたのだ。村に危険が迫る中、ミハイルは 逃げるのか、それともこの地に留まり闘うのか、決断を迫られる。
そして、オリガもまた、彼の選択に向き合うことになる。最初は単なる契約だった。しかし、日々を共に過ごすうちに、彼女の心には確かな想いが芽生えていた。
「私は、お前を失いたくない」
厳しい自然の中で育まれた 二人の絆は、本物となるのか――。
狩猟と料理、そして過酷な雪国でのスローライフ。
ワケあり夫婦が紡ぐ、 温かくておいしい、東欧ごはんの物語!
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