漫画「今度こそ幸せになりたくて離婚を決意したところ、無表情な旦那様が「愛してる」と言ってきました」をネタバレ解説
「……表情筋はどちらに置いてこられたので?」
その一言に、すべてが詰まっている気がした。
セレーナ・ハミルトンは、10年の時を超えて戻ってきた。
かつては夫に愛されることもなく、ただ静かに病に伏し、そして一人きりで命を落とした哀れな子爵令嬢。彼女の前世の人生を振り返るなら、これほど切なく、報われないものはなかっただろう。
だが、今は違う。彼女は過去を知っている。だからこそ、もう同じ悲劇を繰り返すつもりはなかった。
「離婚しましょう、アーサー」
淡々とそう告げた彼女に、夫は無表情のまま返す。
「……いやだ」
なぜ!? 10年前のあなたは、私をただの"静かな令嬢"としか見ていなかったはずなのに? どうして、今さらそんなことを言うの?
セレーナの気持ちはまさに読者の気持ちそのもの。彼女と共に過去の痛みを知り、今度こそ違う人生を歩もうとする彼女に共感し、応援したくなる。そして、無表情のまま「愛してる」と告げるアーサーの不器用さに、思わずツッコミを入れたくなるのだ。
──いや、ほんと、お前それ本気か? どの顔で言ってるんだ???
この物語の面白さは、そんな「不器用すぎる夫」と「もう耐える気ゼロの妻」の絶妙な掛け合いにある。冷徹で感情を表に出さないアーサーは、セレーナの言葉にどう返していいかわからず、無表情のまま「愛してる」と言い続ける。しかし、それがまた逆に嘘っぽく聞こえてしまうという、ある意味、天然のコント。
しかし、物語が進むにつれて、アーサーの不器用な愛情の正体が明らかになっていく。彼は本当に愛情がなかったのか? それとも、何か別の理由があって、あえて感情を抑えていたのか? そんな謎が少しずつ解き明かされていく過程は、まるで恋愛ミステリーのような面白さがある。
そして何より、セレーナの成長がこの物語の最大の魅力だ。一度目の人生では、ただ耐え、孤独に朽ち果てた彼女が、二度目の人生でははっきりと自分の意志を持ち、人生を切り開こうとする。その姿は痛快で、時には笑えて、時には胸が熱くなる。
「私、もう黙って泣くだけの女じゃないんだから」
彼女のそんな言葉に、読者はきっと心の中で拍手するだろう。そして、無表情な夫が、少しずつ、少しずつ彼女の影響を受け、変わっていく姿に目が離せなくなる。
──果たして、アーサーはセレーナに本当の愛を伝えることができるのか?
──そして、彼の顔には、ついに感情が宿るのか!?
クールな旦那をデレさせる物語が好きな人、無愛想な男の不器用な愛情表現に萌える人、そして「今度こそ幸せになりたい」と願うヒロインの成長を見守りたい人には、間違いなく刺さる作品だろう。
結局、愛は言葉だけではなく、行動と表情にも表れるものなのだ。
そして、セレーナの旅は、その愛を探し、確かめる物語なのかもしれない。
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