没落令嬢、貧乏騎士のメイドになります ネタバレ！あらすじ！

没落令嬢、貧乏騎士のメイドになります ネタバレあらすじ

夜会の賑やかな音楽が響く中、アニエス・レーヴェルジュは一際目を引く存在だった。その美しさはまさに絵画のようで、黄金の髪は光を受けて輝き、宝石のような青い瞳は眩しく、白磁の肌はまるで最上の陶器のようだった。周りの貴族たちが彼女に注目し、歓声を上げる中、彼女は誇らしげに微笑んでいた。家族の名声、そして自らの美貌が重なり、彼女の未来には何の不安も感じられなかった。

しかし、そんな華やかな社交界の中に、ベルナール・オルレリアンは一人、冷静な目をして立っていた。彼はオルレリアン子爵家の五男に生まれ、田舎で育った騎士だ。大貴族の血を引くわけでもなく、社交界で注目されることもない彼の姿は、誰からも気に留められることはなかった。だが、彼の心にはしっかりとした誇りがあった。無名の騎士として、彼は誠実に職務を果たしていた。

そんなベルナールが初めてアニエスに近づいたのは、社交界の夜会でのことだった。彼は友人に無理矢理引き寄せられる形で、アニエスのもとへと向かった。しかし、彼がその美しい伯爵令嬢に話しかけると、彼女の周囲の人々はそろって冷ややかな視線を送った。付添人から耳打ちされた後、アニエスはベルナールを一瞥し、露骨に顔を背けた。その蔑むような視線が、ベルナールの胸に鋭く突き刺さった。彼はその場を離れ、夜会の会場を飛び出した。

――どうして、あんな目で見られなければならなかったのか。

彼は怒りと共に家へと帰り、風呂にも入らずにその怒りを胸に抱え続けた。

それから一年が過ぎ、再び社交界のシーズンが巡ってきた。アニエスの噂は頻繁に耳に入るようになり、彼女の家は不祥事に見舞われていた。父親の失脚により、一家は没落し、かつての栄光を失った。多くの者が去り、孤独になったアニエスのもとに、かつて冷ややかな目を向けられたベルナールが再び姿を現す。

ベルナールは王宮の庭園で巡回任務をしている最中、迷路のような薔薇園で思いがけずアニエスと再会した。アニエスは荒い息を吐きながら、恐怖の色を浮かべてベルナールに飛び込んできた。彼女は追い詰められた様子で、恐怖に震えているようだった。驚くべきことに、その瞬間、アニエスはベルナールに助けを求めた。

「――騎士様、お願いします、わたくしを助けて下さい！」

その言葉がベルナールの胸を打った。何もかもを失い、絶望の中にいる彼女を前にして、彼は心の中で迷った。だが、彼女を助けることが自分にできる唯一のことだと感じ、思わず手を差し伸べた。

ベルナールの手を取ったアニエスは、静かな涙を浮かべて彼に頼んだ。彼女は、過去の傲慢な態度を悔い、もう一度自分を立ち上げるために助けを求めていたのだ。

二人はそれぞれに背負うものを抱えながら、共に歩み始める。アニエスの家の没落、そしてベルナールの誇り。だが、その過去を乗り越えて、彼らは新たな未来を築こうとする。

――これは、出会いから始まった物語。そして、どんな過去も乗り越え、二人の未来へと続く物語の始まりに過ぎなかった。