漫画「ヒーリングパラドックス」のネタバレあらすじ
黒岩直斗は、広告業界で働くサラリーマン。日々、無理な残業と締め切りに追われ、心と体は疲れ果てていた。仕事一筋の生活に、もはや楽しさもやりがいも感じられず、心のどこかで休息を求めていた。そんな彼に、同期の佐藤が勧めたのが「岸辺整骨ラボ」だった。
「ここ、すごいらしいよ。疲れた体にぴったりだってさ。」
半信半疑で訪れたそのラボは、ひときわ目を引く建物だった。ドアを開けると、そこには一人の男性が待っていた。彼の名は岸辺一舞。見た目はまるでモデルのようなイケメンで、黒岩とほぼ同じ年齢の若さだったが、院長として堂々とした姿勢を見せていた。
「いらっしゃいませ。疲れを癒しに来たんですね?」岸辺はにっこりと笑い、黒岩を迎え入れた。
最初の印象は、少し過剰に思えるほどのフレンドリーさだったが、施術を始めるとその考えは一変した。岸辺の手はまるで魔法のように、黒岩の固まった肩や背中をほぐしていく。最初は少し疑っていたが、その手つきがあまりにも心地よく、あっという間に黒岩はリラックスしていた。
「とろっとろに気持ち良くして差し上げますんで。」岸辺の言葉に、黒岩は思わず笑ってしまったが、実際その言葉通り、施術は想像以上に心地よかった。やがて、指圧のリズムに身を任せ、彼はうとうとと眠りに落ちてしまう。
目を覚ました時、外はもう朝になっていた。頭がすっきりとして、体が軽く感じる。黒岩は驚き、思わず鏡で自分の姿を確認した。シャツはきれいに洗濯され、スーツも心なしかピカピカだった。あのまま眠ってしまったことを思い出し、恥ずかしさとともに感謝の気持ちが湧いてきた。
「ありがとうございました。お礼に伺いたいんですが…」黒岩が言うと、岸辺は軽く笑って言った。
「お礼よりも、また来てくれるとうれしいなぁ。心配なんで。」
その言葉に、黒岩は心の中で少し温かくなるのを感じた。普段は何も感じなかった日常が、少しだけ違って見える。ラボを後にして歩きながら、体の軽さを実感する。昨日までの疲れが嘘のように消え去り、心がふっと楽になった。
「たった一回でこんなに効くのか…?」
彼は思わず自分に問いかけた。その後も、黒岩は定期的に岸辺整骨ラボに通い、心身ともに癒され続けることになる。そして、彼は次第に岸辺に対して感謝だけでなく、何か特別な感情を抱くようになるが、それが何なのかはまだ気づいていなかった。
黒岩の生活は、あの日を境に少しずつ変わり始めていた。仕事のストレスが和らぎ、心に余裕ができ、体も軽くなった。癒しの場所として、そして岸辺との新たな関係が、彼にとってかけがえのないものになりつつあった。
0コメント